森恵が「ASA-CHANGプロデュース新作」「音楽観」について語る

ASA-CHANGがプロデュースを行なったミニアルバム『オーバールック』が好評を得ている森恵。ギターと馴染みの深い彼女に、今回、幕張にあるホットラインミュージックショールームでインタビューを行った。

新作について、そして音楽観、ギターに対する思いを余すことなく聞いた。


20141122-img_0369.jpg【クリックで大きな画像】


-ミニアルバム『オーバールック』の聴き所を教えて下さい。


森恵

今回は今までの作品と違うカラーがものすごく出せたので、私を知ってくださってる方にはそのギャップ、今回の作品で新しく出会う人にも聴きやすい、手に取っていただきやすいものになったのかなと思います。6曲全部の主人公がまったくカラーが違うっていうのが聴き所の一つです。ミニアルバムだけど、アルバムとしての統一感というよりは、それぞれのキャラクターを濃く出せた一枚になってると思います。


-ASA-CHANGがプロデュースということがあり、ちょっとエレクトロっぽい不思議な曲もありますね。


森恵

そうですね、バラードの『僕が愛した時間』っていう曲は、99.99991・・・%くらい、電子音というか、それで作られていて。初めての打ち合わせの時に、ASA-CHANGと「嫌いな音楽はなんですか?」という話をしたんです。その中で、嫌いっていうか、普段自分の曲としても電子音はあまり使わないし、聴かないなーっていう話をしたんです。それで上がってきたアレンジが、電子音だったんです(笑)。でも、今まで私がイメージしていた電子音とは全く違って、本当に曲によって使い方によって色んな空気を見いだせるものが電子音なんだなっていうのにすごく気づかされて…全然嫌じゃなくて、私にとっても驚きでしたし、自分の新しい世界を見せていただいた感じです。


-ASA-CHANGの音って優しいアナログな感じですもんね。


森恵

固定された音を組み込むっていうよりは、ASA-CHANG自身がドラムやパーカッション叩くようにリズムを打っていたり音色を出していってるので、音自体は電子音だけどグルーヴ感っていうのは生楽器と一緒というか。そういうものだからこその空気が作れてるんだと思います。


-ASA-CHANGから刺激は受けました?


森恵

ほぼ全てが刺激といえば刺激だったんですけど(笑)。その初めての打ち合わせで嫌いなものなんですか?って聞いてくるのも初めてだし…普通は好きなものを聞くじゃないですか。でもそれはASA-CHANGなりの「心の距離の縮め方」だったりとか、音楽性が今どういう風に私の意識が向いてるのかっていうのを知ろうとしてくださる手段だったのかなって思うし、ボーカルについてもこういうお願いはあるけど、森さんが楽しかったらいいんだから!っていう感じでドン!と受け止めてくださるところもあれば、「絶対この服似合うから着てみて!」ってスタイリストさんが言う感じで、音の提示をしてくださったり。だから私の頭にはなかった色んなカラーを、時には激しく、時には優しく色々ぶつけてくださったので、すごい制作も楽しかったし刺激的でした。


-ミニアルバムっていうコンパクトな世界だから上手くできたのかもしれないですね。


森恵

そうですね。それはすごいASA-CHANGとも話していて、「ミニアルバムだから遊ぼうよ!」っていう話もしました。フルアルバムとしては出来ないことがミニアルバムだったらきっと出来るし、そのチャレンジしたいっていう気持ちをダイレクトに伝えることが出来るんじゃない?って言って、ASA-CHANGもたくさんチャレンジをしてくださったと思うし、私もそれに飛び込むことが出来たと思います。


-今回色んなジャンルをやってみてどうでした?


森恵

アレンジに関しては電子音だったり、ガレージっぽい音だったりバンドサウンドだったりっていう初めてのものが多かったんですけど、結局デモの段階で作った時点で、それぞれの楽曲の「カラー」がもう実は出来ていたので、違和感は全くなかったんです。今回は、私が率先していままでと違う曲を作りたい!と思って作ったわけではなく、制作過程の中で「私、変わろうとしてるんだな」と気付かされる場面も多くて、それがASA-CHANGによってはっきりと一つにまとまりました。チャレンジはしたけど、違和感だったりとかこれどうかな?みたいな部分は全くなかったですね。


-ジャケットも挑戦的ですよね。


森恵

実は今回のジャケットは、裏テーマがいっぱいあったりとか、隠れたキーワードみたいなのがたくさんあって、曲から全てが導かれてるというか、ジャケットに関してもアレンジに関しても本当に一本音楽っていうツールで繋がっているんです。今までの私の作品を振り返ったら、ちょっと「おっ?」っていう驚きはあるんですけど、曲を聴いて頂ければ、「こういうことね」って絶対納得して貰えると思います。


-ジャケットも含めて新しい森さんが提示できてる?


森恵

そうですね。今回、すごい楽しかったんですよ。楽しかった分、ファンの方にどう響くかな、というか、どう届くかなっていう不安と期待は両方あったんですけど、でもそれのワクワク感だったりとか楽しさっていうのは、チャレンジしたからこそ生まれてくるものだと思うので…でもやっぱり、発売後に聞こえてくる声は「面白いね」とか新しいことしてる私をもっと見たいっていう声をたくさんいただくので、チャレンジして良かったなと思います。


-森さんといえば、カバー楽曲も話題となります。曲を選ぶ基準はありますか?


森恵

単純に好きな曲だったり、ギターアレンジをするにあたって面白そうだったり、弾き語りで絶対この曲しないだろっていう曲をあえて選んだり、様々ですね。


-色々なジャンルの曲に挑戦していますね。


森恵

バンドっぽいものもあれば、ミスチルさんの曲、『ルビーの指輪』だったり昔の名曲も歌ったり、EXILEさん歌ってみたりとか、弾き語りでやらないだろっていうのをやるっていうか、イメージがないものをやってみるっていうのが面白くて、アップテンポな曲をバラードにしても全然面白いな!とか、テンポゆっくりな曲をギターで刻んでみてグルーヴをよりつけてやってみたらその曲のイメージが変わってすごい面白いな、とか、私が弾き語りをずっと続けてきたからこそできるものがないかな?っていうので、カヴァー曲も日々、チャレンジしながらやってます。


-森さんがカヴァーをする原曲を知らないで聞いているファンも多いですよね。


森恵

そうですね、確かに私も生まれてない時代の曲もあったりするのですが、昔の歌謡曲は親の影響だと思うんです。両親が音楽好きで家でもずっと流れていて、自然と聴いてたから身体に残っているんだと思います。やっぱりいい曲はいつまで経ってもいい曲なので、私が歌うことによって、音楽の魅力っていうのが誰かに伝わればすごい幸せだなと思いますよね。


-楽器の中で、そもそもギターを選んだきっかけは?


森恵

ピアノも幼稚園から中1くらいまで9年間くらい習っていたんです。短大でもピアノを触ったりもしたので、自分の中には「ピアノ」はあったんですけど、ピアノ持ち運べないな、と思って(笑)。キーボードももちろん良いんですけど、生のピアノの音がやっぱり好きで、ちっちゃい頃から聴いてるからこそ、キーボードという選択肢はなかったんです。元々は、うちのおじいちゃんがギター好きで趣味で弾いてたんです。5、6本くらいあったのかな?その一本をちょうだいって言ってもらったところからギターを始めていったっていう感じだったんですけど、ギターって、弾くと身体に振動がそのままくるっていうか…密着してる分、ギターを弾くと体に触れているお腹から振動が身体にくる感じがすごい私にはしっくりきて、で、のちのち歌をストリートでやるにあたって、やっぱりギターの音が自分の身体通ってそれが声になってるような感覚がすごい好きだったので、他の選択肢はなかったですね。


-ギターと体の空洞がひとつながりになってるような?


森恵

本当にそうですね、歌声を出すみたいに、ギターの音色も歌と一緒に自分の口から混ざって出る感じがたまらなく好きです。


-そういう例えは初めて聞きました。


森恵

でもすごい不思議だったんですよね。その振動が心地よいというか、ギターを弾いて響く感じ。低音とかも特に身体にくるし、高音部分は手から響いてる感じがしたりとか、そういうのがすごく好きで。自分の中に音が入ってくる感覚があったので。


-その中でも、アコギを選んだのはなぜですか?


森恵

地元のときは特にアンプとかマイクとか何も使わない状況でギターのハードケースにあぐらをかいて座って弾いてたので、そういうのも一つの理由だったと思うんです。アンプを使う環境だったら私はもしかしたらストリートに気軽に出れなかったかもしれないので…一人で運ぶのもすごく大変だし、相方とかいればまた別だったと思うんですけど、一人でやるっていう分には気軽にギター一本抱えていけば良いのでその分ではやっぱりアコギだったなと思います。あと、わたし、ギターのにおいも好きで、ギターをかぐのが好きなんです。


-ギターの匂いですか?


森恵

個体差があって、全部違う匂いがするんです。木の匂いと塗料の匂いが凄く好きなんです。なんか、おかしいですよね(笑)。


-アコギの音色って雑踏の中で届きづらいことってありますか?


森恵

そうですね、ボディが鳴らないと本当に距離が届く範囲っていうのがすごく狭まってくるので…でもそれでもやっぱりがむしゃらに弾いてると、ギターは答えてくれるっていうか、どんどん鳴るようになってくるんです。だから自分が頑張れば力をくれるっていうか応えてくれるので、ずっと弾き続けて音を変えていくのがスゴく楽しいです。


-ストリートミュージシャンにとって、やりやすい街ってあるんですか?


森恵

地方のほうがやりやすいし、確認が出来るんだとおもうんですよね。自分がどういう歌を歌ってるかだったりとか、どういう人が振り返ってくれるかだったりとか立ち止まってくれるかだったりとか…っていうのを一つ一つ確認出来るんです。


-まずは人通りがすくないところから?


森恵

もちろんチャレンジして絶対に「いかないといけない場所」っていうのもあるんですが、ステップアップしていくっていうのはすごく良いかなと思いますね。


-自分の中でステップアップってありました?


森恵

ものすごい、ちょっとずつ階段を上がっていった感じなんです。地元広島の福山っていう街が地元で、本当に夜7時以降になると人通りがどんどん減っていって、1時間に5人通るかな?くらいの時があったりするんで、そういうところから初めていって、ここで止めるんだっていう気持ちで歌っていくわけです。で、広島市内の方に行って、もっと人が増えるんで、そこで…福山は地下通路だったので声が響くんですけど、市内の方はアーケードである程度声は響くけど、空間がものすごく広いので、より声をどういう風に響かすかっていうのを試さないといけないっていうのもあって、東京に来てからも最初はアンプを使わなくても済むところで、吉祥寺に歌いに行って、そこはアーケードは あるけど人の量が半端ないっていう(笑)。半端ないし、人で声が反響しなくなるんですよ。本当に全然違うんですよね。だからそれをどういう風な歌い方すればいいんだろう?と考えながら、渋谷とか新宿とか行き始めて、大宮、川崎、人の多さは違うけど、年齢層の違うところに頻繁に行ったりとか、そういうステップアップっていうかいろんなところに歌いに行くっていうチャレンジはしていきました。


-ストリートでやるのって楽しいですか?


森恵

私は好きだから楽しいんですけど、やっぱりへこむこともたくさんあって、それこそ一人も集まらないとか、真冬でも歌うので、指先痛いとか、荷物重いとか色々あるんですけど、それは出会ってくれる人たちによって全部帳消しにされます。


-DTMが主流になりつつある中で、アコギで音楽を作る魅力は?


森恵

まず、この世の中から電気がなくなっても使えるんですよ(笑)。極論なんですけど、自分とその楽器さえあれば音楽が出来ちゃうっていうのがまさに魅力ですね。


-今回の『オーバールック』はDTMとの融合もしていますね。


森恵

そうです。私もDTMとか電子音っていうのに固定概念が昔はやっぱあったんですよね。どうしても生音がいいとか、生音のグルーヴには敵わないとか、色んな思いがあったんですけど、それでもこれだけDTMの音を好きな人がいるってことはどういう魅力が詰まってるんだろうって思ったときに、やっぱりその融合性というか、生音には出せない空気感だったりとか、電子音だったらどこまでも続く音が自由に作れたりとか、空気感をすごく広げられたりとか、そういうものが出来るっていうのを知れたんで、そういうものを一緒に楽しめるようになればよりいいかなっていうのは感じました。


-エレキは持っていますか?


森恵

持ってます。年に一回「マイカントリーロード」っていうワンマンライブやらせてもらってるんですけど、そこではエレキを使います。今回のツアーで使うかどうかはまだ悩んでるんですが…。ギルドのセミアコも持ってるし、スターファイヤーもあったりとか、それも融合ですよね。


-感覚はやっぱ違います?


森恵

全然違いますね。私はやっぱりドレッドタイプのちょっとおっきいものが昔から好きで、そうするとネックも太くなっちゃうんですけど、それがベースにある分エレキを持ったときの細さの衝撃というか、ネックの細さだったり、これは女性が弾きやすいな、とか、もしかしたらエレキの方が握力も少なくて済んだりとか、自分のピッキングによっての音の調整とかっていうのもアンプで出来たりとかしちゃうので、そういう部分ではもしかして女性には始めるにはもしかしていいものなのかなとか。


-楽器屋さんは結構行きますか?


森恵

時間があるとフラッと覗いたりします。ギター見てみたり、こんな色の出てるんだ!とか、色から見てみたりとか、形これ持ったらエレキの尖ったところ当たらないかな?とか色々見たりとか(笑)。このアンプ大きさ違うけど何が違うんだろう?とかはありますよね。


-今回、国内最大の楽器イベント「2014楽器フェア」のホットラインミュージックブースへ出演するにあたっての意気込みを聞かせて下さい。


森恵

すごい光栄ですし、その分緊張もしていますけど、弾き語りとしてどういうスタイルでやってきたかを見せたいです。ギターの音色が弾き方によって違ったりだとか、アンプの調整によって違ったりだとか、そういうものが自分の好みに自分の音を作れるっていうのが楽しいというかそういう楽しさを伝えられれば良いかなと思っています。弾き語りでこんなのやらないよね?っていう曲だったりとか、私はサムピックやフィンガーピックを使うのですが、最近は利用するミュージシャンも減ってるので、ピック1枚で奏でる曲と、サムピックでの音の違いだったりとか、 そういう普段目にしないようなものを取り入れつつできたらいいなと思います。ギター好きとか楽器好きの方にはどう響くのかすごく緊張するんですけど(笑)。


-ライブと違いますもんね。


森恵

そうなんですよね、だから気持ち的にはライブというよりはストリートに近い状態の意気込みです。初めての人をどれだけ引きつけられるかっていうことだったり、そういう意識だと思うんです。私もそこで学ぶことがたくさんあると思うし、私も色んな楽器だったり機材に触れて新しい音発見出来たらいいなと思ってますね。


-そこで評価得られればミュージシャンとしてすごく大きいですよね。


森恵

そうですね。ぶちかましたいなと思ってるんですけど(笑)。意気込みとしては。女性っぽくない部分を、楽器でかっこよさを出せたらいいなと思ってますけど。


-そんな森さんのために、今回はストリートでも力を発揮しそうな、「Fender PASSPORT MINI」を用意しました。持ち運び可能な小型アンプです。ちょっと実際に弾いいてみませんか。


森恵

はい…(試奏をする)…小型アンプって、どうしても低音とミッドが薄い感じがいままではしていたんですが、スゴくいい音が出ますね。ちっこいのに、優秀です!


-これならば、数多くのミュージシャンが集まる楽器フェアでも注目を集められそうですね。ちなみに、マイクもインプットできて、エフェクトも掛けられます。


森恵

うわ、ちっこいのに優秀!


-ちなみに、ファンの方でギター始めた方とか話は聞きますか?


森恵

あっ、いらっしゃいますよ!ギター始めました!とか、これが欲しいけど今まだお金がないからバイトしてますとか、そういう風にメッセージをくれる方とか今増えてきてるので嬉しいなと実感してますね。


-シンガーソングライターが増えると嬉しい?


森恵

そうですね、シンガーソングライターもそうですけど、楽器を持って表現する人が増えるとすごいいいなと思ってるんです。それが私の音楽や演奏を見てだったら、なおさら嬉しいですね。


-きっと、森さんの音楽を聞けば、楽器をやりたいと思う人はまだまだ、増えると思います。


森恵

ありがとうございます!そうなるように、これからも頑張って行きたいです!


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【HLMミュージックチャンネル開局記念生放送第3弾 11月22日(土)10:00~】

【ニコ生公式放送 ダルP×BuzzGに後藤まりこ!FenderArtistにG.O.D.も初揃い!!@HLM楽器フェア11月23日(日)10:10~】

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